阿部智里 最新作『発現』の感想
みなさま、こんにちは!
今朝は起きたら銀世界が広がっているかなという微かな望みを抱いていたのですが、何もなかったかのように乾いていました。
6時すこし前に外を見たのですが、月がきれいな弧を描いていまして、近くの金星と相まってとても幻想的な雰囲気でした。
湿度が高くなったのでありがたいです(o^^o)
みなさまのお住まいの地域は雪はいかがでしたでしょうか。
きらきらした世界に心踊る一方、歩くときはやはり危険が多いのでお気を付けくださいませ。
さて、今日は昨日宣言いたしましたとおり、阿部智里 先生の『発現』をご紹介していきたいと思います。
阿部 智里(あべ ちさと)とは?
まずは阿部先生のご紹介をざっくりします。
阿部先生は1991年生まれの群馬出身の作家さんです。
早稲田大学の文化構想学部在学中に『烏に単は似合わない』で松本清張賞を受賞しデビュー。そしてそれを皮切りに「八咫烏シリーズ」と呼ばれる7冊の本を執筆しています。こちらもすごくおもしろいのでまた紹介します。
阿部先生の執筆ジャンルは幻想小説になるらしく、たしかに和風ファンタジーではあります。八咫烏シリーズという名前からしておわかりいただけるように、日本の神話を主にベースにしています。
しかし、これは実際読まないとわからないのですが、阿部先生の書く物語ってどれも驚くほど巧妙に仕組まれたミステリーになっているんです!どの本も最後にどんでん返しを食らいます。ミステリー部門で有名な松本清張賞をなぜファンタジー小説が、という感じにもなったらしいのですが、読めばわかります。それも含めてのミステリーなのでしょう。
そんなファンタジーでミステリーな小説を得意とする阿部先生が新しく書き下ろした最新作が『発現』です!
では今日の醍醐味、こちらの紹介をしていきたいと思います。
ミステリー?ホラー?いいえ、阿部智里
『発現』が発売されたのは1月30日、一昨日です。
池袋の旭屋書店で購入すると2月2日に行われるサイン会に参加できるとのことで、一昨日買ってきました(笑)。
見た目から入りますと、カバーが豪華です。白地に赤い彼岸花が箔押しされています。びっくりするのが、帯にまで箔が押されているんです。豪華です。。
中身は赤い見返しに細かい泡模様の入った扉。(扉の紙はなんという紙でしょうか)
見てるだけでも楽しい本です。
ですが、中もちゃんと読みますとも。
一昨日買ったその日のうちに一気読みしてしまったのですが、阿部智里節というかなんというか、やっぱり最後までまったく真相は見えてきません。
内容はさらっとしていて、読むのが遅い私でも3時間あれば読めてしまいました。
以下、あらすじです。
あらすじ
父と二人で暮らしていた大学生のさつきの元に、年の離れた兄が帰ってきた。兄は統合失調症にかかり妻子のいる家で暮らせない状態らしく、症状の幻影に怯えながら実家で暮らすことになる。そして入れ替わるように兄の家で厄介になっていたさつきに、ある日から兄と同じ、少女と彼岸花の幻影が迫り出す。二人が見ているものは本当にだたの幻影なのか。
それと同時に見えだす昭和に生きたある男の自殺、弟がたどり着いた真実とは。
謳い文句は
「ねえ。どうしてあなた生きているの?」
物語自体は平成と昭和の2つの時代を行き来しながら進んでいきます。
最初はまったく繋がりが見えてきません。後半になるにつれなんとなく繋がりは見えてきますが、一番肝心な幻影の正体、幽霊なのか呪いなのか、それとも本当に病気なのか、なんだなんだと思いながら最後まで読むことになります。
阿部先生の作品はどれも緻密でツッコミどころのないものでした。ですからここにきていきなり呪いでした払いましたハッピーエンドみたいな結末は用意しないと確信しながらも、最後の想像が全くつかない!
そして読み進め、また最後にやられました٩(๑˃̌ۿ˂̌๑)۶キィィー
正直に申しますと、あまり気持ちのいい結末ではありません。幻影の正体はわかったものの、問題が解決したと言い切るのは乱暴な気がします。
ですが、まさかそんな結末が待っているとは思ってもみなかったので、文字通り面食らいました。
そして先ほど気持ちのいい結末ではないと言いましたが、これ以外はないと認めざるを得ない立派に筋の通った最後でした。
読み終わって最初に思ったのは
「事実は小説よりも奇なり」
この一言です。
これも小説ですが、なんだか本当にありえそうでふとした瞬間背筋にぞくっとくるものでした。
きっとそれも計算済みなんでしょうね。
阿部先生のしてやったり顔が目に浮かびます。
最後に
阿部先生が大好きすぎてずいぶん熱く語ってしまいました。
ネタバレにならないよう気をつけたら、本当にひたすら感想になってしまいました。愛だけでも伝わっていると嬉しいです。
今回は阿部先生の設定の緻密さをメインに語ってきましたが、実は阿部先生の真髄はその表現力だと私は思っています。
今回の『発現』なら迫り来る少女と彼岸花も展開も、驚くほどさらっと書かれています。
しかしそれが返ってリアル感を増し、読んでいて現実と小説の区別がつかなくなることもしばしば。みなさまにもぜひこの感覚は味わっていただきたいです!
長々と語りましたが、ここまでお読みいただいてありがとうございます(*´◒`*)
ほかの作品も追い追いご紹介していきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。